shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

ベイカー街221Bにて 

~煙突屋のベンジャミンによる手記~


 「おはようございます、ホームズさん」と、部屋に入るなり、僕らを代表してウィギンズが挨拶した。「よく来てくれたね、みんな。ここには、ビスケットにミルクも、ハドソンさんの用意してくれたサンドウィッチもたくさんあるよ。そこらへんに座りながら、楽にしてくれ。」ホームズはいつものように、ベイカー街イレギュラーズ(浮浪少年探偵団)の僕らをやさしく迎えてくれた。ワトソンさんも、笑顔で僕たちそれぞれに飲み物を入れてくれた。


 「先ほど、レストレード警部が事件をもってきてくれてね」と、ホームズさんは事件のあらましを説明した。要約すると、アームステッド将軍という老人が殺害されたのだ。今朝の十時ごろ、自宅にいたアームステッドに見知らぬ訪問者があったそうだ。「この手紙を渡してくれたら分かるから」と、その男に言われて、執事が手紙をアームステッドに届けると、その中身を読んだ主人は真っ青になって、「その人をここに呼びなさい」と命じたのだという。将軍の書斎で、二人は何か話し合っていたが、突然に剣を交える音が聞こえ、つぎに将軍のうめき声があった。執事が部屋に入ろうとしたが、扉には鍵がかかっていて入れない。執事が庭に回って、部屋の窓から入ると、将軍はすでに死んでいたのだという。訪問者も、主人を驚かせた手紙も、まったく消えていたのだ。


 「この事件を、君たちに捜査してもらいたいのだ。どうだね、やってみるかい。」ホームズさんは、いたずらっ子のような目で僕たちをのぞき込んだ。「もちろんです。」ウィギンズは答えた。