※参考文献『シャーロック・ホームズ　１０の怪事件』より「錫の兵隊」

TRPG的な試みで扱うシナリオ「陸軍将軍の死」

＜捜査の目的＞
  目的は、誰がアームステッド将軍を殺したのかを捜し出すこと。できれば、殺された理由も知りたい。

＜初動捜査に必要と思われる情報＞
  すでに与えられている情報として、いくつかを列挙しておく。
１） 殺害現場、アームステッド邸（２７NW）。
２） ウォータールー戦役トンティ生命保険の現存の加入者。５名おられる。
ジャーゲンス大尉（８２歳）４６NW
アニータ＆クレア・トーマス姉妹（８０歳）４NW
ローランド（７９歳）３６WC
ダドリー（７７歳）２SE
３） 捜査協力してくれる人物たち。“捜査の情報源”参照。
４） ヒントをくれる場合もあるかも。ホームズ＆ワトソンの借家。ベイカー街２２１B（４２NW）。能力判定（アイディア・幸運・知識）してもらう。２D１０の出目が能力値以下なら成功。
５） １８９０年６月１０日火曜日の新聞。
６） ロンドン市内の地図から、容疑者の行動などを推測する。行動時間を知ることで、アリバイを確認、またはそれを崩す。

＜ヒント　事例：情報を整理する＞
　現場からは多くのきっかけを得ることができる。亡き妻との仲は良くなかったという証言がある。また、妻の兄フィッチ卿には、アームステッドに対する恨みも、仕事上の付き合いもあるので、殺害の動機はありそうだ。美しい文字で書かれた古い封筒とその手紙は、殺人犯とともに消えた。この手紙が鍵である。ではどうやってそこまでたどり着くのか。動機が愛憎や嫉妬といった人間関係にあるのなら、生命保険金目当てではない。しかし、イングランド銀行によれば、３００万ポンドという（約４億１７００万円）という莫大なお金である。保険加入者とその親族のアリバイをはっきりとさせねばならない。
　だから、１）保険加入者とその親族に会って話を聞く事。２）それ以外の人物を捜す事、の二点に分けることができる。

＜GMとしての注意点＞
　できるだけ情報をすんなりと提供できるようにしたい。こちら側の手間がかかる場合には、技能判定をしてもらい、時間をかせぐこともありうる。図書館の判定と能力判定が似たり寄ったりになってしまう可能性もあるが、TRPG的な流れを大切にしたい。実際のロールプレイにより、GMの想定外の行動をPCが求めた場合には、面白いならばそれに乗るというスタンスで迎えたい。最終的な結果が同じようになるならば、過程はより愉しいほうがよいからだ。
　“捜査の情報源”を用いる場合にも、技能として図書館、目星、言語力（母国語＋外国語）、交渉力（信用＋説得＋言いくるめ＋心理学など）、医学などの理数系知識、能力値の幸運、アイディア、知識などで、２D１０ロールして欲しい。情報の出し具合を出目で調整することができる。例えば、ロンドン警視庁（１３SW）でより確かな情報を得るためには、レストレード警部からの信用が欲しいし、それと引き換えの面白ネタを提供するなど、交渉力も問われる。同様のことは、新聞記者たちとの関わりにも通じる。
　ゲームの進行がダレないように、時間制限を設けたり、GMが「ホームズの助言をもらってみては？」などと言ったりすることで、情報を開示して捜査の進行を促進させてもよい。
　記憶から思い出す場合は、アイディアによる能力判定。人物を思い出す場合には、知性（INT）×７で２D１０ロール。平凡な容姿（APPが９～１２）の人は、追跡の技能判定に＋１０の修正を得られる。

＜職業技能と趣味技能について＞
　クトゥルフ神話TRPGの現代探索者シートを用いているので、能力値の算出を３D６でする。それによって、職業技能（教育EDU×２０）と趣味技能（知性INT×１０）を割り振ることになるが、浮浪少年たちには、ある程度の制限を設けなければならない。つまり、鉄砲などの武器はもてないし、体力的に大人を倒すほどの筋力や武術を習得してはいないといった具合だ。体格SIZを９以内に限定し、耐久度をあまり高くしない。さらに、EDU（教育）は、小学生レベルであり、一般教養といった知識には限界がある。INT（知性）は生まれもったものだと思うので高い値であっても問題ない。もっとも、学識のある人物に習えばよいのだから、とにかく情報を収集するために駆けまわることだ。技能に関していえば、少なくてもよいので、６０％ほどの高い確率の技能をもちたい。また、グループでの捜査なので、お互いの技能が重ならないように注意したい。互いにもっていないものを補い合うことができるからだ。技能判定には、2D10を用いる。それによる出目が技能値と同じかそれ以下の場合にのみ、技能を行使でき、GMはなんらかの情報を開示して、PCに利益をもたらさねばならない。