shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

本を読む

 
 私の本の読み方は、偏っていると思うし、知識を貯めるほど読み漁っているわけでもない。小説に関していえば、読書というよりもTVドラマの原作を機会があれば読んでみようかなという程度のものだ。最近ではW杯のラグビーブームに一役買った『ノーサイド・ゲーム』が読みたくてしようがなかったが、録画したそのドラマを何度か見返しているうちに興味が薄れてきた感じ。池井戸作品では、『下町ロケット』、『ルーズベルトゲーム』を観たし、読んでも面白かった。『半沢直樹』ものの原作は読んでいないが、あれはTVドラマで充分に堪能できたと思う。TVドラマの続編も期待している。社会人としてがんばってのし上がっていく姿は、昔の植木等の無責任男シリーズなどを彷彿させるが、それにプラスして、競技スボーツやランニング、ロケット開発などをからめて読者を飽きさせないよう、二部構成にした点がうまく機能している。


 以前ワイドショーでやっていたが、図書館を利用して読書を続けている人は、比較的に長生きするのだという。なるほどだと思うが、私の場合、借りた本を読むというのが、どちらかというと苦手だ。自分のものにして、書きこむことや付箋を貼りっぱなしにする傾向がある。とはいえ、文庫版を安く手に入れて心置きなく読むというだけのことだ。文庫化されていない新しめの作品は、おおいに図書館を利用したい。
 エッセイを一時期、読み漁ったことがある。向田邦子の『父の詫び状』や、阿川佐和子と檀ふみの『ああ言えば、こう食う』などだ。面白可笑しく読めるエッセイは気軽に読めるし、また読み返したくなるほどの秀作は、一度手放してもまた買いなおしてしまうほどだ。ただ苦しい経験をしてから、ふとしたきっかけで立ち直り、その後の人生を豊かにしていった人の逸話や体験談ほど、自分の現状を投影して感情移入しやすいものも他にないと思う。


『ワセダ三畳青春期』という文庫本がある。早稲田大の探検部に所属し、大学近くの古アパートに引っ越してきた万年四回生だった高野秀行という人が書いた11年間の自伝的ノン・フィクションのような、エッセイのような作品だ。「第一回酒飲み書店員大賞(2006年)」を受賞したということで、ふだん新刊を買わない私の目にも留まったのだと思う。集英社文庫というのは、私の中ではマイナーで、かつて大好きだった『船乗りクプクプの冒険』(北杜夫)以来、ずっと手にする機会がなかったが、なぜかこの作品には惹かれるものがあった。いまでは何度も読み返すほどのお気に入りである。考えてみれば、私自身、米国の田舎町にある三流大学での寮生活は、楽しいこともあったが、往々にして苦い思い出なのだ。二人部屋の寮のあの空間、あの寂しさを思い返すために、読みたくなるのかもしれない。幸いにも私は五年かかってなんとか卒業できたが、高野氏ほど、豊かな青春期を過ごせなかったと思う。彼には仲間があり、出会いや機会を面白可笑しく消化してゆく自由さとまじめさがある。毎回、この本を読みながら、うらやましく思うのだ。私の場合、もっと友人や家族や出会いを大切にしてくれば良かった、その後の人生が違ったものになったはずだ、と思わされるのである。