shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

和製版プリズンブレイクー『破獄』

ビートたけし×山田孝之のドラマ『破獄』を観た。原作を読んだのは何年もまえだったが、映像としても期待通りの作品だったと思う。


吉村昭の小説『破獄』では、日本の太平洋戦争にまつわる記述が物語の合間に何度も出てくるところが読みにくかったので、白鳥由栄(実際のモデルらしい)改め、佐久間清太郎が破獄するまでの独房でのシーンまでとばし、とばし、読んだ記憶がある。


ドラマの脚本では、しつこくないように時代背景を扱いつつ、戦時中という異様な空気の中で人権を無視されるような扱いを受ける佐久間に対し、視聴者を感情移入させてしまうところはさすがであった。佐久間に温情をみせる看守をビートたけしふんする、浦田進一人にさせるなど、ドラマ的なアレンジも効いている。『夏目漱石の妻』を手掛けた池端俊策だと知って、納得である。『協奏曲』の脚本もこの人だそうだ。


私は、いわゆる脱獄ものの映画・ドラマや小説が好きだ。好きな映画に『第十七捕虜収容所』と『ショーシャンクの空に』がある。『塀の中の懲りない面々』も、脱獄ものではないが、看守と囚人のやり取りなどが意外に面白かった。TVドラマでは、『プリズンブレイク』のシーズン1がよい。不当な扱いを受けている兄を助けるために、全身に監獄の地図のタトゥーをして入獄するという話だ。犯した罪過を刑期の中で反省し・・・というのがまっとうで倫理的に優れたものなのだろうが、現実的とは言えないのかもしれない。被害者とその家族からすれば、許されざるものだ。されど、たとえ囚人であっても人間である。生きる者にあってしかるべき尊厳がある。不自由な世の中だからこそ、自由を求めた脱獄囚たちの姿がたくましく見えるのかもしれない。