shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

ソードワールド2.0「故郷の水」①

<シナリオの概観>
 このシナリオは前回のシナリオ「地下牢と竜」につづく冒険として用意したもの。盟友たちからのリクエストとして挙がった、ダンジョンでの冒険をしたいということと、背景に聖書の世界観や価値観を盛り込みたいというGMの想いを併せもっている。オリジナルシナリオとなる。
 ソードワールドの世界観を損なわずに、BC1000年頃の旧約時代に冒険者たち(PC)をスムーズにいざなうことができるかが鍵となる。目的は、本編で明らかにされるが、要は謎解きである。
<シナリオの舞台>
 場所は、ショーンハウゼン国王の王宮。国王は、冒険者たちにねぎらいの言葉とともに別れの時を惜しんでいる。これからの冒険にはいくつかのオプションがある中で、ルキスラに帰って遺跡探索をつづけるのではなく、もう一度、老エルフのジェイドに同行するかたちで新しい冒険を迎える。時間と空間を超えて、BC1000年頃の旧約聖書の時代、統一王国となりつつある古代イスラエルが、その舞台である。
<シナリオ本編>
導入
 ショーンハウゼン国王から、褒美の一つとして「何か欲しいものを言ってみよ。可能ならば、与えよう」との嬉しい言葉があった。二人の冒険者たちは、それぞれ高価なマジックアイテム(ソードワールド2.0ルールブック1改訂版に収録されているもの)を求めた。しかし、すでに充分な報酬を受けて満足していた老エルフだけは、国王に一風変わった願い事を申し出たのである。老エルフは言った。「わしは、今回の冒険で、国王様が魔法の書の中に入って行かれたことが何よりもショッキングであり、好奇心をもちました。できる事なら、わしも次の冒険を魔法の書に入るところから始めてみたいのです。どうか、この老人のわがままをお許しください。」
 そこで国王は、困った顔をしながらも、「あなたは真の冒険者だ、面白い。この(ドラゴンの眼の)腕輪をそなたに貸そう。これで本の世界に入って行くのだ。ただし、そなたは無事に帰って来るように。そして、そなたの冒険譚を余に語ってくれ」という言葉をかけた。
 ジェイドの安全には万全を期すために、国王は勇者たちを同行させてもよいと言ったので、ジェイドは盟友であるエルフの娘と拳闘士を連れて行くことにした。


魔法の書籍の中へ
 ジェイドの手記より―。 わしら三人は、本の上に手を置いて念じると、その中に引き込まれた。そこは真っ白な空間であり、ふわふわした感触のカーペットの上を歩くような浮いた感覚があった。すると、亡霊のような者(=エルダードラゴンのつえの所持者にして創作者。故人。)が近づいてきた。「そなたたちは、何をしにここに参ったのか。」 わしは答えた。「ショーンハウゼン国王にお許しをいただいて、この場におります。赤竜のつえにまつわる冒険が終了し、わしらは行く先が分からないのです。どうか、わしらの歩むべき道をお示しください。」
 「ふぉ、ふぉ。そなたは、面白いことを言う。好奇心に任せて、どこでも好きな所へ行けと言いたいところじゃが。・・・あ、いや待て、これも若い国王と復活しつつあるサンクトパウルスブルグ王国のためになろうというものぞ。よし、わしが時空を超えた所へ、そなたたちを送り届けよう。しかし、謎が解けなければこちらの世界に戻ってくることを許されんぞ。それでもよいのか。」
 わしらは相談の時をもった。しかし、身の危険よりも、自分たちの好奇心を押し殺すことができずに、その亡霊に尋ねた。「その謎とは、いかなるものなのですか。」 「これじゃ。この文の空白を正しく埋められたなら、そなたたちはそれを国王に伝えるべき教訓として持ち帰ることができるじゃろう。さあ、勇気をだして行くのじゃ。」(つづく)

NHKドラマ「火花」

「火花」といえば、お笑いのピース又吉の小説であり、芥川賞を獲った作品として有名だ。ブームの去った頃合いに、作品に触れようと私のほうは思っていたのだが、その前に映像化してしまった。NHKでは、先日、ドラマ「火花」の第一話放映日に、NHKスペシャル「又吉直樹 第二作への苦闘」をぶつけてきた。それに気づいて録画撮りができてよかった。NHKスペシャルのほうを先に観たのだが、ますます原作が読みたくなった。二作目を「新潮」に掲載させるということで、われわれには敷居が高くなってしまった感がある。文芸専門誌となれば、お笑いの方から又吉の小説に興味をもった人には、小難しい芸術の作品に触れるという感じか。


あえて締め切りの期限を設けず、売れっ子芸人としての多忙な毎日の隙間をぬって、睡眠の時間すらも削って小説と向き合い、ノートパソコンに書き込み、さらに推敲に推敲を重ねて書き直していく又吉。しかも、同時にエッセイや単発的な短文などもこなしているらしい。


ドラマ「火花」は、売れない芸人の人生模様が切なくて面白い。これからの展開にも期待している。

白青竜、赤竜に滅ぼされる

エルフの村へ向けて森に入ろうとしていたとき、わしらの前に立ちふさがる者どもがいた。馬上から騎士団の団長らしき者が言った。「そなたたちの一挙手一投足を、我々は見てきた。そのつえを置いて帰りなさい。さもなければ、我ら暗黒騎士団が成敗いたす。」 わしらは国王を囲むように守りながら、それぞれの武器を敵に向けた。


暗黒騎士団の団長:「おお、そうそう。その脱獄囚も、近々裁きにかけられるがゆえ、引き渡してもらおう。」
ジェイド(エルフの弓武器使い):「なにを!国王に向かって無礼な。お前たちこそ、枢機卿の魔術に迷わされているのじゃ。目を覚ませ。そして王国への忠義を思い出すのじゃ」


わしは騎士団に向かって叫んだ。だが、彼らは荒々しげにわしらを威嚇し、それぞれが剣を抜き出した。どうやら闘いはまのがれないようだ。暗黒騎士団の数は、先ほどの口上をのべた者を入れて六名。拳闘士が前線に飛び出して闘いの火花をきった。王国内の選りすぐりの騎士団は手ごわかったが、エリフの娘の機転の利いた援護で、騎乗から引きずり落ちた騎士を拳闘士が自慢の格闘で倒していく。神聖魔法により眠らされたり、気絶したりした騎士が五名。団長だけが一人残された。すると、後方にいた若き国王が声をあげた。


国王:「勇者ファリウスよ。そなたのことはよく知っている。余の父に対して忠義を示し、よく働いてくれたからだ。先ほど、老エルフのジェイドが語ったように、余もそなたに言う。そなたたちはデラウ枢機卿の魔術によって惑わされていたのだ。もう一度、王国への忠誠心を示してはくれないだろうか。」


団長は、返す言葉を失ったようだ。短い沈黙があった。が、そのとき、大きな土けむりが起こり、薄青いレッサードラゴンの群れが飛び込んできたので、わしたちは後方に退かねばならなかった。その中で最も大きなドラゴンの背には、デラウ枢機卿がいた。デラウは怒り狂いながら、「お前たちを森には帰さん。皆殺しにしてやる」と叫んだ。わしらを根絶しようとしているのだ。


レッサードラゴンを倒すには、わしらの能力に優るレベルの技術が必要であり、しかもそれらが何匹もいるのである。わしらは、そこで賢者マテウーノの“悪の枢軸から世を守る…秘密”という言葉を思い起こした。また、白骨の亡霊の“このエルダードラゴンのつえをもってすれば…”という声も思い出した。早速、国王に竜を召喚させるべきことをお伝えすると、国王は右手に持ったつえをかかげて念じ、「出でよ、エルダードラゴン。そして、これらのレッサードラゴンをすべて滅ぼせ」と命じた。すると、どこからともなく赤い竜が飛んで来て、あたりに大きな影をつくったのである。その赤竜の破壊力は、想像を超えた恐ろしいものであった。口から吐き出された炎で、レッサードラゴンの群れは戦闘能力を失い、力尽きて地面に倒れるものと逃げ去るものとがあった。瞬時にして、勝負はついたのである。


残された暗黒騎士団の団長とデラウ枢機卿は捕えられた。ショーンハウゼン様はサンクトパウルスブルグ王国の国王に復権し、レッサードラゴンのつえとエルダードラゴンのつえの所有者となった。しかしながら、わしらには国王に対して助言すべきことがいくつかあった。悪の魔術に侵されていた国を再建するために、国民の信頼をふたたび得るためにすべきことがあったのである。それは、騎士団の団長ファリウスを赦して、国王直属の騎士団の団長に再任命することであった。拳闘士などは、生かすにしても騎士団からの脱退、あるいは厳しい処罰がいるのではないかと意見していたが、わしはそう考えなかった。団長に国王の慈悲を示すことは、国民全体に慈悲を示したことになり、王国の士気が高まるだろうと思ったのである。さらに、エルダードラゴンの存在である。このつえは、“平和と安定の時代には無用の長物”であり、危険なものであるのだ。新国王はわしらの助言を素直に受け入れてくださった。


かくしてデラウ枢機卿ら王国の道を誤らせた者どもには、正当な裁きが執りおこなわれた。そして、王国は以前にもまして活気のある豊かで友好的な国となったのである。国王が魔法の書から得た助言に従ったところ、“エルダードラゴンのつえ”は消えてなくなってしまったそうである。それが必要となる時期まで、どこか別の洞窟に隠されているのだろうとうわさされている―。

※参考文献: TRPGシナリオ図書館 ソードワールド・シナリオ「地下牢と竜」