shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

白青竜、赤竜に滅ぼされる

エルフの村へ向けて森に入ろうとしていたとき、わしらの前に立ちふさがる者どもがいた。馬上から騎士団の団長らしき者が言った。「そなたたちの一挙手一投足を、我々は見てきた。そのつえを置いて帰りなさい。さもなければ、我ら暗黒騎士団が成敗いたす。」 わしらは国王を囲むように守りながら、それぞれの武器を敵に向けた。


暗黒騎士団の団長:「おお、そうそう。その脱獄囚も、近々裁きにかけられるがゆえ、引き渡してもらおう。」
ジェイド(エルフの弓武器使い):「なにを!国王に向かって無礼な。お前たちこそ、枢機卿の魔術に迷わされているのじゃ。目を覚ませ。そして王国への忠義を思い出すのじゃ」


わしは騎士団に向かって叫んだ。だが、彼らは荒々しげにわしらを威嚇し、それぞれが剣を抜き出した。どうやら闘いはまのがれないようだ。暗黒騎士団の数は、先ほどの口上をのべた者を入れて六名。拳闘士が前線に飛び出して闘いの火花をきった。王国内の選りすぐりの騎士団は手ごわかったが、エリフの娘の機転の利いた援護で、騎乗から引きずり落ちた騎士を拳闘士が自慢の格闘で倒していく。神聖魔法により眠らされたり、気絶したりした騎士が五名。団長だけが一人残された。すると、後方にいた若き国王が声をあげた。


国王:「勇者ファリウスよ。そなたのことはよく知っている。余の父に対して忠義を示し、よく働いてくれたからだ。先ほど、老エルフのジェイドが語ったように、余もそなたに言う。そなたたちはデラウ枢機卿の魔術によって惑わされていたのだ。もう一度、王国への忠誠心を示してはくれないだろうか。」


団長は、返す言葉を失ったようだ。短い沈黙があった。が、そのとき、大きな土けむりが起こり、薄青いレッサードラゴンの群れが飛び込んできたので、わしたちは後方に退かねばならなかった。その中で最も大きなドラゴンの背には、デラウ枢機卿がいた。デラウは怒り狂いながら、「お前たちを森には帰さん。皆殺しにしてやる」と叫んだ。わしらを根絶しようとしているのだ。


レッサードラゴンを倒すには、わしらの能力に優るレベルの技術が必要であり、しかもそれらが何匹もいるのである。わしらは、そこで賢者マテウーノの“悪の枢軸から世を守る…秘密”という言葉を思い起こした。また、白骨の亡霊の“このエルダードラゴンのつえをもってすれば…”という声も思い出した。早速、国王に竜を召喚させるべきことをお伝えすると、国王は右手に持ったつえをかかげて念じ、「出でよ、エルダードラゴン。そして、これらのレッサードラゴンをすべて滅ぼせ」と命じた。すると、どこからともなく赤い竜が飛んで来て、あたりに大きな影をつくったのである。その赤竜の破壊力は、想像を超えた恐ろしいものであった。口から吐き出された炎で、レッサードラゴンの群れは戦闘能力を失い、力尽きて地面に倒れるものと逃げ去るものとがあった。瞬時にして、勝負はついたのである。


残された暗黒騎士団の団長とデラウ枢機卿は捕えられた。ショーンハウゼン様はサンクトパウルスブルグ王国の国王に復権し、レッサードラゴンのつえとエルダードラゴンのつえの所有者となった。しかしながら、わしらには国王に対して助言すべきことがいくつかあった。悪の魔術に侵されていた国を再建するために、国民の信頼をふたたび得るためにすべきことがあったのである。それは、騎士団の団長ファリウスを赦して、国王直属の騎士団の団長に再任命することであった。拳闘士などは、生かすにしても騎士団からの脱退、あるいは厳しい処罰がいるのではないかと意見していたが、わしはそう考えなかった。団長に国王の慈悲を示すことは、国民全体に慈悲を示したことになり、王国の士気が高まるだろうと思ったのである。さらに、エルダードラゴンの存在である。このつえは、“平和と安定の時代には無用の長物”であり、危険なものであるのだ。新国王はわしらの助言を素直に受け入れてくださった。


かくしてデラウ枢機卿ら王国の道を誤らせた者どもには、正当な裁きが執りおこなわれた。そして、王国は以前にもまして活気のある豊かで友好的な国となったのである。国王が魔法の書から得た助言に従ったところ、“エルダードラゴンのつえ”は消えてなくなってしまったそうである。それが必要となる時期まで、どこか別の洞窟に隠されているのだろうとうわさされている―。

※参考文献: TRPGシナリオ図書館 ソードワールド・シナリオ「地下牢と竜」