shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

赤竜を召喚させる杖

国王は、わしらの説明どおりにその魔法の書籍に手を置いて念じ、書を開いた。(この書は、羊皮紙によって手書きされたものだが、一般的な巻物タイプではなく、コーデックスと呼ばれる冊子状タイプだった。) だが、なにも起こらない。長い沈黙が流れた。わしらは、どのようにしてこの書を開けばよいのかを協議した。すると、いくつかのことがわかった。この本の名は、国王の知る古い言語で、「選ばれし者のみに通ずる魔法の書」ということだった。また、国王は牢獄に持ち込むことのできた筆記用具や身のまわりのもの、それ以外にも隠し持っていた指輪や魔性石の付いた“竜の眼"の腕輪があった。そこで、国王にはその腕輪を右腕にはめて、再度魔法の書籍を開いていただいた。すると、なんということか。国王御自身が本の中に入ってしまわれたのだ。


その間は、二、三分といったところだろうか。国王が本の外に出てこられた。書の中の世界で、国王はある亡霊のような者に出会い、助言を受けたそうである。“竜の眼”がつげるカルメル山脈付近の洞窟に入り、ダンジョンを無事に通過したなら、レッサードラゴンのつえに優るものと出会えるであろう、というのである。


そこでわし(エルフの弓武器使い)とエルフの娘と拳闘士の三名、そして国王と信頼のおけるエルフの警備隊は、“竜の眼”から発せられる赤い光に導かれながら、洞窟に入って探索することになった。奥に進んでいくと、岩の中に石づくりの扉があった。解錠して入ってみると、そこは長い通路のようなところだった。しかし、天井は高く、前方の壁のあたりに日がさしているようだ。探索してみると、人骨と思われる骨が床に散らばっている以外にはなにもない。奥へ進んでいくと、日の光だと思われたものが人為的な通過防止のバリアのようなものだとわかった。拳闘士は、自分が触れてみると言いだしたのだが、あまりにも危険なので骨を投げ入れてみることになった。すると、バリアがはじけて、「バチバチ」という音を立てた。さらに、25メートルほどあった天井から、大きな刃のついた振り子がすばやく触れながら、しかし、ゆっくりと降りてくるではないか。バリアの先には壁があり、扉が一つあった。わしらはその扉を解錠して難を逃れることができた。


すると、第二のダンジョンである。扉には魔動機文明語で「汝は騎士として歩め」と書いてあった。部屋に入ると、8X8の盤上に立っているような気がした。皆で知恵を出し合って考えた。すると、これはチェスの盤上であり、「騎士」つまり、“ナイト”駒としてタイル上をYの字に縦横と、飛び跳ねながら向こう側の壁にまでたどり着けそうだ、ということになった。たいまつを付けて部屋全体をさらに確認すると、マスのところどころに罠の仕掛けやら、剣、盾、宝の木箱のようなものまであることに気づいた。飛び跳ねる方向を間違えてしまえば、先ほどのバリアのように危険な目に遭うかもしれない。そこで、まず拳闘士が右側のナイト所定位置(b1)から飛び跳ねた。どうやら大丈夫そうである。つづいてエルフの娘が左側(g1)から飛び跳ねた。これも無事である。わしは国王と一緒にゆっくりと彼らの後につづくことにした。すると、拳闘士が4つのマスにかかる罠に飛び込んでしまい、HPマイナス2のダメージを受けてしまった。しかしながら、そのまま先のタイルへと飛び、まんまと「宝剣」を手に入れて喜んでいる。わしらは肝を冷やしたが、難なく向こう側までたどり着くことができた。エルフの娘もちゃっかりと金属鎧を獲得していたし、拳闘士はさらに木箱からヒーリングポーションの壺も手に入れていた。


扉を解錠して三つ目のダンジョンへ―。この空間は、まるで金庫の中にでもいるような閉塞感があり、息苦しさを感じた。エルフの娘が習得したばかりだという“サンライト”という神聖魔法で部屋全体を明るくしてくれた。そのおかげで、ほぼ中央に祭壇があり、その上につえが安置されていることを知った。拳闘士がおそるおそるそのつえを持ちあげると、祭壇の向こう側に白骨の守護兵しきものが現われた。


白骨の亡霊:「我輩は、そのつえの所有者にして製作者である。そのつえは、私利私欲や道のはずれた悪意を抱いて用いる者に使いこなすことはできない。なんせ恐ろしい赤竜を呼び出すつえなんじゃからな、ふぉ、ふぉ(笑)。汝らに正義はあるのか。大義なき戦に用いれば、そのつえが役立たんばかりか、身を亡ぼすことになるぞ。」


「わしらには、サンクトパウルスブルグ王国を暴君から守るという大義がある。ここにおられる方が、真の国王ショーンハウゼン様じゃ」と、わしは叫んだ。すると、亡霊は驚いて国王の前にひざまずき、敬意を表してから言った。「このつえは、貴方様が用いられよ。貴方の頭上には権威者の光が灯されておる。選ばれし者が国を統治するのは当然であり、定めじゃ。邪悪な敵どもなど、恐るるに足らん。この“エルダードラゴンのつえ”をもってすれば、万事がうまくいく。しかしながら、平和と安定の時代には、このつえが無用の産物となるのじゃ。欲にとらわれることなく、きっぱりと捨て去らねばならん。」