shishintheboardのブログ

小説、雑誌、新書、専門書、TV、ニュース記事などからの気になったことをメモしたり、そこから掘り下げて黙想したいことを書き綴ります。どんな形でもいいから、表現化したいな~。

創造力

『愚者の宮殿』というおじさん向けのポッドキャストがある。TRPGやF1、昔の懐かしおもちゃや駄菓子、電子ゲームといった話題で、愉しませてくれる面白い番組である。ただちょっとボリュームがあるので、散歩中や通勤時に聞く事が好ましい。そんな同番組の中で、「地下46階」を拝聴させてもらった。テーマは、現代の乱立する新人賞問題と小説作家の苦悩ともいうべきもので興味深かった。


先日観た、芥川賞作家のピース又吉の苦悩ぶりを思い返しながら、小説家、ライター、ライトノベル作家というような職業の在り方の厳しさを感じた。人に読んでいただくものを書くというのは、大変なことである。現代人は多くの情報にアクセスできるようになっている。ネットしかり、流通しかり、映像しかり。様々な情報の取捨選択に追われているので、あえて活字を読ませるには、よほどの魅力がないといけないのだ。


私は小説好きを自認できるほど、多くの良書と呼ばれるものを読めてはいないが、自分の専門分野の学術論文を読むことは好きだし、書くことも人前でしゃべることも苦にならない性格だと思っている。自分の今抱く興味から手当たり次第にインプットするのは、経験的に効率がよく、それに愉しい作業だとも思っている。ただし、どの小説家のファンで、その人の新刊がでれば即買いして読むというほどではない。好きだったのは、沢木耕太郎の『深夜特急』のインド・ネパール編。自分も若いころ、沢木氏に習ってカルカッタでの文化ショックを受けることができた。ノンフィクション小説という分野のものはだいぶ読んだが、要は自分が活動的に生きることで愉しめることを知った。


それから夏目漱石の『こころ』。これほど面白い小説があるだろうかと思うほど、繰り返し読んでいる。手紙やネット投稿の中でストーリー展開をさせたりする湊かなえの小説には、『こころ』的な文学センスを感じるのは私だけだろうか。


私の感覚では、創造するのには、まずインプットがある。この本のこの箇所といった限定されたものの中に集中し、徹底的に調べることが次のステップである。古典を読むものにとっては、原語の文法にまで及ぶ、作業である。この作業は辞書を引いたり、用法を確認したりと比較的につまらないステップかもしれないが、自分の筋力を蓄えねば独自力は発揮されないのだ。ここから黙想するというつもりで、発想したことをノートにしたためておく。文章的に比喩や対比、その他の類があれば、それも記入する。そして、次にすることが、自分以外の他者の解釈、意見を読むのだ。自分の知らなかった点や自分の発想力のほうが上だ、などと比較できるので、ここは愉しく進めたい。ここからが、アウトプットとなる。自分なりの工夫や構成を盛り込んで、一気に書き上げる。これを何回も校正すれば、人様に読んでいただけるものになると思う。